空を見上げる少女の瞳に映る世界(最終話)
まさか本当に8話で終わるとは思わなかった。極めて変則的と言えるこの作品、果たしてどうだったか。
▼OVA再編集の弊害、わかりにくい世界観
この作品、やはり前半はOVAの再編集で構成されていたようで、テレビシリーズのアニメとしては異様なまでに展開が早く、世界観の説明がほとんど無いまま3話までストーリーが突っ走る。ようやく4話になって世界観の説明と設定がムント[ CV:小野大輔 ]の口からユメミ[ CV:相沢舞 ]に語られるまで、なにやらよく分からないけどどっかの異世界で戦っている人たちと、それにリンクできるユメミという構図だけで見るしかなかった。正直、これでは作品の謎を楽しむ以前に情報が足り無すぎるだろう。
▼もっとキャラクターを生かして欲しい
しかし分かってしまえばかなり単純な構図。要は天上世界での争い毎にユメミが巻き込まれ、その中の1国である魔導国の王、ムントに味方して天上世界を救う話なんです。そしてムントとユメミは絶対的な信頼関係の元、アクトの循環を取り戻すと共に、地上世界も天上世界もまとめて救ってしまう。せっかくテレビシリーズ化するんだから、幼少期のユメミとムントの関わりを追加するとか、決定的な信頼を築くような出来事を描くとか、工夫のしようがあったんじゃないだろうか。スズメ[ CV:今野宏美 ]に関してはカズヤ[ CV:高橋伸也 ]とのエピソードがあったから良いものの、イチコ[ CV:堀川千華 ]に関してはいてもいなくてもストーリーには全く支障がないくらいの放置プレー。この3人の仲の良さはよく分かった。だからこそ、もっとイチコにも活躍の場を与えても良かったと思う。
▼映像の作りは「古い」の一言
古いOVAの再編集部分があるため、HD制作にはできなかったんでしょう。額縁も必然(TOKYO MXでは額縁でしたが他の放送局でも同様?)だったというわけか。服装のデザインや色の塗り方も単色使いで影の量も少なく、制作予算の少なさを感じさせる。作画クオリティという意味では特に問題はなかったと思うけど、そもそもこれだけ単純なデザインにしておいてクオリティが落ちるようでは大問題です。ちなみに完全リニューアルされたらしい音楽についてはなかなか良かったんじゃないでしょうか。壮大な世界観を上手く表現できていたと思う。
▼劇場で見る気がしない劇場版
最終話、結局ムントがどうなったのか分からないまま物語は終幕を迎えた。この展開自体は俺はアリだと思う。世界は救われた、だけどその世界を救った勇者の行方は未だ知れず。想像を巡らせることができるこういう展開は日本のアニメーションの特徴の1つでしょう。じゃあこの結末が明らかになるとして、劇場版が見たいか?と聞かれても、正直そこまでの作品じゃないでしょう。第一、この映像レベルで映画館に映して良いんですか?
▼ 4点 / 10点満点中
この作品、素材にはかなりの可能性があったんじゃないだろうか。調味料の使い方、火の加減などでおいしくできあがる可能性があった。残念ながら、材料をぶち込んでとりあえず口に出来る物を作りました、という域を出ていない。アニメーション制作としての京アニの実績は疑う余地がないが、原作での実績はまだこれからということだろう。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント