タイタニア(最終話)
▼原作はアニメ化不可能?
銀河英雄伝説でその名をはせる田中芳樹氏原作の小説をアニメ化、ということで注目度は高かったはず。原作がまだ完結していないということで、原作ファンとしては「どこまでアニメ化するのか?」「どういう終わらせ方をするのか?」という点も注目だったに違いない。原作を読んだことは無いので原作との違いを俺が語ることは出来ないけど、途中ゲストに登場した石黒監督の話を聞く限り、アニメ化にあたってはそれなりの再構成をしている模様。結果としてストーリーは分かりやすかったし、何よりNHKのアニメらしく要所でナレーションによる解説が入り、登場人物には毎回テロップが出て、見ている側を置き去りにしない工夫がありがたい。
▼2つの視点
この作品の最も面白くワクワクさせてくれる点は、タイタニアの視点とヒューリック[ CV:小西克幸 ]の視点、この切り替えが絶妙なところ。世間で避難の的になっているタイタニアながら、ジュスラン[ CV:岸尾だいすけ ]の思慮深さやアジュマーン[ CV:三宅健太 ]の絶対的な権力。手段としての支配を求めるだけでなく、必要悪としての部分を見せつつバランスを取るタイタニアの政治能力の高さは感心する。一方でヒューリックの場合は大きな目標や正義感があるわけではなく、それでも権力と対峙できるだけの切れる頭脳という武器でタイタニアの大きな敵となっていく。この両者を第三者的な視点で見ることで、世界が変動していく様子を正義でもなく悪でもなく楽しめる。
▼盛り上がりはしたものの
一方で世界観があまりにも壮大すぎるがゆえ、26話を使ってもまだまだ描ききることが出来ていない。タイタニアの存在がどういう物なのか、そのタイタニアに反抗するとはどういうことか?そんなタイタニアの世界の理を説明され、さぁこれから世界がどんどん変革の時を迎えますよ!というところでアニメは終了。明らかにストーリーの鍵を握りそうなリディア[ CV:名塚佳織 ]やバルアミー[ CV:保志総一郎 ]はある程度の活躍はしたものの、この程度の人物ではないだろう。材料だけで十分期待感を得られたので、あとはどれだけおいしく仕上げてくれるのか。と、ここでいったん小休止。続きも期待してますよ。
▼日本アニメの課題の縮図
石黒監督は「スペースバトルなどのシーンがCGになったことで、絵のスペシャリストが育っていない」と嘆いていた。確かにそのとおりなんだろう。職人と呼べるアニメーターが減っているのは紛れもない事実で、どんな作品でも言われている。一方でCGが無ければタイタニアはもっと膨大な予算と制作期間が必要だったことも事実なんじゃないかと思う。これだけ優れた作品をアニメーションで見たいという思いもある一方、石黒監督の言うこともごもっとも。折しもアニメ制作の下請けに関するガイドラインを経産省が策定しようとしているところ。健全な方向に発展することを願うばかり。
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