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ファントム:最終話(第26話)

▼最終話
今の自分の人格を作り上げたサイス[ CV:千葉一伸 ]に対して引き金を引いた江漣[ CV:高垣彩陽 ]。失われた記憶を全て取り戻すことはできなかったけど、故郷であるモンゴルの地にたどり着いた。そしてこれからは玲二[ CV:入野自由 ]と共に生きていける・・。ようやく江漣の前に見え始めた希望の光が一瞬で暗黒の闇と化すような最後の銃声。そんな・・・、そんな終わり方ってありなのか?陰鬱な世界観と絶望的な境遇からスタートしたファントム、最後までその世界観が変わることはなく、それでも続く江漣の人生。何とも重苦しいエンディングとなった。

▼真下監督とニトロプラス
ニトロプラスのゲーム原作を真下監督がアニメ化。カオスヘッドを見ても分かるように元々シナリオのクオリティが高いと想像されるニトロプラスのゲームと、オリジナル作品で評価を高めた真下監督。この組み合わせって果たしてどうなっちゃうの?水と油にならない?という心配は少なからずあった。原作ゲームを未プレイなのでシナリオにどこまでオリジナリティを入れてきたのか定かではないけれど、少なくとも1つの作品としてシナリオと演出、絵のイメージはギュッとまとまっていて、俺の心配は杞憂に終わったことは分かった。ある1日の出来事をじっくり描いたかと思えば、急に数ヶ月の時間が経っているような時間変化の激しさには、少々面食らうこともあったけど、おそらく元々のシナリオのボリュームは相当な物だったんだろう。それを江漣と玲二、そしてサイスやキャル[ CV:沢城みゆき ]美緒[ CV:小清水亜美 ]の心情を上手く入れながら完成させた。

▼自然とスライドする視点
この作品、「あの人は本当はどう思っているの?」という点が、世界観への没入度を深めてくれるポイントだったと思う。前半は江漣に振り回される玲二になって「江漣の心にはサイスしかいないのか?」という疑念を共有。中盤では第三者的な視点から、「玲二はキャルをどうしたいと思っているのか?」という不安にも似た感覚。そして後半は玲二と江漣とキャル、それぞれが何を思い、どういう行動を選択するのかを手に汗握りながら見守る。対象が段々とスライドしていくにもかかわらず、自然とストーリーと共に感情がそちらへ向いていく。説明的なセリフやシーンはほとんど無いこの作品で、これが自然にできていたということは、それだけシナリオも演出も登場人物の描き方も、全ての方向性がしっかり同じ方向を向いていて、そしてクオリティが高かったことの証明だと思う。

▼ハイクオリティな絵を作り出す制作体制
アニメーション制作はBee Train。動画は前半数話にP.A.WORKSが参加し、以降はMSJ武蔵野と杭州飛龍の2つの海外動画請負会社へ一貫して出す体制。これがこの作品のクオリティを維持する上で大きな貢献をしていたと思う。背景の小物、車とかのモデリングされた3DCGと手書きの時の差が激しすぎるシーンが多々あったけど、それ以外のアクションシーンとか人物の作画、動画についてはテレビアニメとしては満点と言っても良いでしょう。特に江漣とか玲二は無表情な事が多くて、それが逆に意志の強さを感じさせることもあったし、何を考えているのか分からない怖さを感じることもあった。26話2クールをとおして非常に高いクオリティを維持。絵は文句なしのレベルです。

ファントム(@テレビ東京:デジタル) / アニメーション制作:BEE TRAIN

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