黒執事Ⅱ(最終話:第12話)
▼最終話
シエル[ CV:坂本真綾 ]を抱いたまま、漆黒の海へ吸い込まれていくハンナ[ CV:平野綾 ]の唇が動いた。セバスチャン[ CV:小野大輔 ]があれほど露骨に表情を変えて衝撃を受けた場面は見たことが無かった。アロイス[ CV:水樹奈々 ]との契約の内容は何だったのか?
それは水の中で開いたシエルの目を見て、すぐに理解できた。理解は出来たんだけど、俺としてはなかなかその事実を受け入れられなかった。何故?どうしてシエルまで悪魔になってしまったのか?結果として、シエルとセバスチャンの主と執事という関係は、未来永劫続くことになった。その主従関係に、主を敬う気持ちは無い。従者を気遣う心もない。あるのは"契約"という縛りだけ。少なくともこれがハッピーエンドとは思えない。誰かに寄り添ってしか生きる事の出来なかったアロイスの呪い。何とも言えない余韻を残したまま、作品としてのフィナーレを迎えた。
▼適度な混乱
この作品が始まった当初、当然のように前作の続編だと思っていたし、アロイスとクロード[ CV:櫻井孝宏 ]が物語の中心だと思い込んでいた。そこへ登場したシエルとセバスチャン。シエルが「女王陛下のために」とか言い出すので、てっきり前作よりも時間軸が前の世界が舞台なんだと思い込んでしまった。このストーリーの構成が実に見事だ。シエルの失われた記憶がもたらした混乱に、まさに俺も飲み込まれてしまった。
▼徐々に明らかになる真実
その混乱も、結局最終話まで徐々に、少しずつ明らかになる。ここがポイントだ。決して一気に出てくる訳じゃない。シエルが、そしてアロイスが自分の心と向き合い、自分の弱さと戦っていく。そんな内面の描写を通じて、徐々に物語りの真実に近づいていく。全12話として見たときに、そのテンポと描き方のバランスがとっても良くできている。キャラクターという面では決して万人ウケはしないと思うし、世界観もかなり独特な雰囲気を持っていて、基本は女性向け作品だと思う。見る人は選ぶと思うけれど、作品全部、1話単体を越えた世界観の構築は実に見事だ。
▼映像クオリティ
その作品の世界観を支える大きな要素、それは黒を基調にしたダークなビジュアル。そこにはもちろん、そのクオリティが非情に高かったという要因がプラスされる。正直なところ、最終話付近ではカメラが引いた構図の時の作画の手抜きはいかがなモノかとも思うけれど、シエルやセバスチャン、クロードにアロイスといった主要なキャラクターの表情、そして瞳。言葉として喋っている内容と同じくらい、この作品では表情が重要な物語の要素だった。その表現の質の高さは文句なし。パッケージがDVDのみのリリースでBlu-rayが発売されないあたりに、女性向け作品であることを強く感じる。(たぶん単身世帯でのBlu-ray普及率は男性が圧倒的に高く、女性は相当に低い。)
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