刀語(最終話:第12話)
▼最終話
次々と四季崎記紀[ CV:森功至 ]の完成形変体刀を破壊していく七花[ CV:細谷佳正 ]。その刀を集めてきた道程を知っているからこそ、そこにとがめ[ CV:田村ゆかり ]の姿を見てしまう。まるで七花がとがめと過ごしてきた日々、とがめとの想い出を自ら破壊しているかのようで、見るに堪えない。
とがめの最期。銃で撃たれてもそこは奇策士。何か起死回生の逆転劇を隠しているんじゃないか?とがめ無しでの刀語なんてあり得ない。そんな気持ちを打ち消すように、とがめと七花が最期の言葉を紡いでいく。静寂の中に七花の叫びが響く様子は、なんの抵抗もなく自然に自分の心の中に流れ込んでくる。刀語という作品が作り上げてきた言葉の力、言葉の持つ意味、そして言葉が作り出す映像に見えない何か。その全てが凝縮された最高のシーンだ。合掌。
七花と右衛門左右衛門[ CV:小山力也 ]の戦いは、まさに死闘だった。今までは自分の意志で戦っていなかった七花が、初めて鑢七花の感情をむき出しにした瞬間。最後の技を繰り出した瞬間、とがめの髪の毛が舞ったシーンが印象的だ。まるで時間が止まったかのようなあの瞬間。とがめが嬉しそうに七花の元に駆け寄ってきて、そしてちょっとだけツンデレな笑顔を見せる様子が浮かんでくるようだ。
結果として四季崎記紀の企みは失敗、そして七花は否定姫[ CV:戸松遙 ]との旅程道半ば。否定姫が生きながらえていることに、どういう感想を持つだろうか?俺は少しホッとした。昔の七花だったら、迷わず否定姫を殺していたと思う。刀としての完成度は少し落ちたのかもしれない。とがめや七実[ CV:中原麻衣 ]の存在を忘れた訳じゃない。それでも、否定姫と七花のこれからの未来が明るいことを望まずにはいられなかった。
おまけ。誠刀・銓を持たされていた皿場工舎[ CV:早水沙織 ]のリアクションが緊迫感の中に出来た穴のように、ふっと心が緩んだ。銓がおでこにヒットした時のリアクションが最高。
▼圧倒的な言葉
1話からもうとにかく圧倒された膨大な量のセリフ。早口で無意味なことをまくし立てているわけでもなければ、勢いで単語を並べているわけでもない。これは原作小説や脚本のデキだけじゃなくて、役者としての演技力にも圧倒されたと言って間違えない。とがめや対戦相手たちの言葉が始まる瞬間、それはあっという間にこの作品の世界観に引き込まれていく瞬間だ。膨大な量の言葉が何の違和感もなくスッと頭に入ってくる。そのキャラクターがその言葉を発することに、何の違和感も無い。全てが自然。最近はセリフの量が多かったり、長いセリフを特徴とした作品が増えてきているけれど、刀語はその中でも言葉が生きている、魂が入っていると感じられる数少ない作品であることは間違えない。
▼人間として成長する七花
この作品の世界観は実に不思議だ。やけにリアルに人が死ぬのに、七花はまるでそれを現実と受け止めようとしない。いや、七花にとってはそれが現実かどうかなんて気にする必要もない出来事だったのかもしれない。普通の人が道を歩く虫を踏んでも、何の気にも留めないように。そんな七花のまるで人間味のないキャラクターが、とがめという奇策士の力で、みるみるうちに人間になっていく。人としての感情、心が出来上がっていく。そしてその集大成がとがめの死だった―。とがめの死は未だに心にズシッと重くのしかかるけれど、もしとがめと七花がこのままの関係でいたら?七花の刀としての人生、はたまた人間としての一生。直接的に多くは語られないけれど、多くを考えさせられた。
▼さすがの企画力とアニメ力
まずはフジテレビ。1ヶ月に1回、尺は60分。これを12ヶ月連続放送で全12話。普通のテレビシリーズに置き換えれば2クール24話ってことになる。それをこの時間の使い方。そしてWHITE FOX。何でもアフレコの時には既に100%完成した絵があったとか。そしてあのクオリティ。迫力。この2者の実力の共演があったからこそ、ここまでの作品に仕上がったんだと思う。1ヶ月後でも、前回のストーリーは結構覚えてたからね。1週間前のアニメでも忘れることなんて多々あるのに。WHITE FOXは今頃、シュタインズ・ゲートの制作真っ最中だろうか。原作ゲームのシナリオが秀逸だっただけに、こちらにもより一層期待がかかる。
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