屍鬼(最終話:第22話)
▼最終話
屍鬼は例外なくその"命"を断たれる―。分かってはいても、恵[ CV:戸松遙 ]の最期は思わず目を覆いたくなるような惨い殺され方になってしまった。最終話での救いと言えば、今まで音沙汰の無かった昭[ CV:川上慶子 ]がかおり[ CV:長嶋はるか ]と共に隣町の病院で無事が確認できたことくらいか。
沙子[ CV:悠木碧 ]がその命を室井[ CV:興津和幸 ]によって救われたという事実は、かなり複雑な心境だ。屍鬼の象徴的存在であったはずの沙子。人間の立場からすれば、外場村で起こった悲しい出来事の元凶であることを思えば、憎むべき対象でこそあれ、哀れむようなことは無いはず。
それでも、沙子が教会に逃げ込んで神に救いを求めるシーンでは、何とか彼女だけは助けてあげても良いんじゃないのか?そんな気持ちになっていたのも事実。大川[ CV:石井康嗣 ]に殺されそうになった瞬間、起き上がった室井が助けに来たときには、思わずホッとしていた。
これでTVでの放送は終了。22話という中途半端な尺で制作するはずもなく、23話と24話はBlu-ray・DVDへの収録となる模様。率直に言ってこの終わり方は何とも後味が悪い。尾崎[ CV:大川透 ]の言う勝ち負けで言えば、誰も勝者がいない。残りの2話ではそのあたりも描かれるんだろうか?出来ればテレビ放送or有料配信して欲しいところだけど、無理だろうな。
▼古典的ホラーストーリー
吸血鬼の存在、そしてそれに噛まれる事による奇病の伝染。題材としてはホラーの定番。そこに「日本の閉鎖的な村社会」という独特の要素が加わる。素材としては申し分なし、そして料理の仕方も上手かった。見ている側には何が起こっているかおおむね理解できる。だけど村の大半の人には理解できない。
このジレンマの中で、次々とヒーローが生まれ、そして落胆させられる。最初は夏野、そして室井。最終的に事態を理解して行動に移したのは尾崎。知らず知らずのうちに村の人間が全て屍鬼に入れ替わってしまうのではないか。そんな恐怖感と、事態を打開してくれる人間が現れるのではないかという期待感。怖さと面白さが同居した状態をバランス良く描ききった。
▼多数過ぎる登場人物
メインのキャラクターに加え、とにかく登場人物が多い。次から次へと出てくる外場の住人。この作品ではこれが物語のリアリティを高めて、没入度を上げる大きな理由だったと思う。小説やマンガの場合、ストーリーを理解しやすくするために、ある程度登場人物の数を抑えるのは常套。それ故、物語が非常に狭い範囲で展開しているように錯覚することがある。
この作品の場合、狭い範囲=外場村なんだけど、そうは言っても村って意外とたくさんの人が住んでいて、そこで生活している。これだけたくさんの人が登場した事で、外場村の存在感、スケールが妙にリアルに感じられた。村の大きさ、広さ、そしてそこに住んでいる人同士の関係。そういう要素が相まって、「村が屍鬼に飲み込まれる」という恐怖感が高まっていったんだと思う。
細かいけれど、登場人物に毎回テロップを出してくれたのはとってもありがたい。これがあると無いとでは、このアニメ版から入った人の理解度がかなり違うと思う。
▼作画も古典的?
登場人物が多くなったことにもよるんだろうか、キャラクターの絵柄としては一昔前のアニメって感じがする。特に尖った輪郭が目に付いたかな。一方で屍鬼の目、恐怖に怯える人間の表情、集団心理からブレーキが効かなくなった群衆。このへんは特筆すべきものがあった。デジタルアニメ故の弊害だろうか、血の赤さが必要以上に赤く見えたのは気になった。EDみたいに画面全体に少しエフェクトをかけても良かったかも。
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