ちょっと真面目なアニメ業界ネタ:GDHがゴンゾを吸収合併(上)
今週になってGDHがゴンゾを吸収合併し、社名を株式会社ゴンゾに変更するというニュースが流れた。おっさんになったせいか、アニメの内容に加えて「ビジネス」という観点でこの手のニュースはどうしても気になってしまう。(以下の内容は全て個人的な感想と推測に基づく内容になりますので、ご注意下さい。)
◆ゴンゾ吸収合併の意味は?
そもそもGDHに関しては債務超過の状態が続いていたようで、東洋経済の2月21日号でも土壇場企業ランキングの49位にランクインするなど、事業継続そのものに関する不安が少なからずあった模様。今回は『「創業の原点」に返ってアニメーション制作事業を中心としてグローバルな成長を目指すため(プレスリリースより引用)』とのリリースが出ているけれど、実態としては「いわかぜ1号投資事業有限責任組合(投資ファンド)」のTOBによる会社再建という色合いの方が濃いという見方もあるようだ。
◆GDHの目指した所はなんだったのか?
どの業界でもビジネスでは間違えなく下請けより元請けが儲かる。アニメーション産業もその構造は同じはずで、下請けで動画を描いているプロダクションよりは元請けのプロダクションの方が儲かるし、さらに言えば元請けプロダクションに制作を発注している版権を持っている会社の方がもっと儲かるはず。GDHは単なる下請けから脱却してよりビジネスを指向した結果、「制作も請け負える版権会社」を目指したと思われる。
◆制作請負は分かりやすいビジネスモデル
そもそも版権ビジネスと制作請負ではビジネスに対する考え方が違う。制作請負であれば評価の基軸は「早い」「安い」、そして「それなりの質」の3つだ。特によほどのこだわりのある作品で無い限り重要なのは前者の2つ。求められた量の仕事をこなし決められた対価を得る。これが極めて短いサイクルで回るから、「これをやればこれだけ儲かる」という予想が立てやすい。逆に「直近でこれだけの仕事が無いと会社が持たない」という危険度も分かりやすい。
◆一筋縄ではいかなかった版権ビジネス
版権ビジネスになるとどう変わるのか?ここでは版権ビジネスという言葉をDVDや関連商品から得られる利益という意味で使っている。特に大きいのがDVDのパッケージ販売で得られる利益。「テレビアニメのDVDはなぜ高い?」という記事の著者、伊藤雅之氏の言葉を借りれば、「TV放映はDVD販売のためのプロモーション」となっているのが実態だ。ポイントは「DVD販売の場合、アニメ制作のために投下した資本が利益として手元に戻ってくるまでに時間がかかる」うえに、「投下した資本に対してどの程度の利益が、場合によっては損失が返ってくるのか読みにくい」ということだ。これが制作請負との大きな違い。版権ビジネスは想像以上に資本回転期間が長いということが言える。これが1つめの罠だった。
つづく
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