閃光のナイトレイド(最終話:第13話)
▼最終話
せめて、希望のかけらを―。EDで雪菜[ CV:生田善子 ]が最後の最後で口にしかけた言葉。「せめて―」、そしてそこからのサブタイトル。雪菜が最後までその言葉を言い終わることなく、終幕を迎えた物語に深い意味を感じてしまう。果たしてこの後、雪菜や葵[ CV:吉野裕行 ]、そして葛[ CV:浪川大輔 ]たちがどんな未来を迎えたのかは、想像に委ねられた。そして、雪菜の願いは―。
兄の勲[ CV:平田広明 ]が命を落とした。そして棗[ CV:星野貴紀 ]が銃弾に倒れたことをまだ知らない。雪菜の心の痛みを思うと計り知れない。それでも、雪菜が静音[ CV:川澄綾子 ]の力を借りて見せた幻影には、意味があったと信じたい。桜井機関の暗躍に幕が下ろされても、戦争に突き進む世の流れは変わらなかった。だけど、雪菜が希望を持ち続けて生きている。それだけでも少しだけ救われた気分になった。
いろいろな物を残して、そしていろいろなメッセージを詰め込んで最終話を迎えたこの作品。終わった後、少しの放心状態のあと、いろいろな考えが頭を巡っていた。何と言葉で表現すれば良いのか難しいこの感覚。1つ言えることは、今期の中でもベストの1作であるということ。
▼史実に基づくフィクション
江戸時代までさかのぼる作品は苦手なんだけれど、近代日本史・世界史の史実に基づくフィクションは、俺の中ではかなり好きなジャンル。自分の中で知識としてバックグラウンドがある物語であればあるほど、フィクションの中のリアリティが増してきて、まるで自分が時代の大きな転換点に立たされているような気分を味わえるから。この不思議な感覚こそが、非現実であるアニメとしての到達できる1つの頂点だと思う。それに加えて、魅力的なキャラクターと超能力。このSF要素とストーリーとのバランス、マッチングが絶妙。どちらかが立ちすぎると嘘くさくなって急に白けてしまうもんだけど、閃光のナイトレイドはシリーズ構成も含めて、作品としての仕立てが素晴らしかった。敢えて注文を付けるとするならば、風蘭[ CV:藤田咲 ]のキャラ作りは少々やりすぎ・・。
▼作品に込められたメッセージ
なぜ雪菜が最後の言葉を言い切らなかったのか?「希望のかけら」は、おそらく今現在、2010年の今に託されているから。俺はそういうメッセージだと感じた。第二次世界大戦から日本の敗戦。雪菜たちの行動は、その未来を変える礎にはおそらくなり得なかった。それでも、雪菜たちのメッセージこそが、この作品を見ている全ての人に伝えたかったこと。雪菜が見せた幻影と、史実として自分たちが認識している広島や長崎の風景。それはおそらく、雪菜がこの作品の舞台となった時代で、多くの人に伝えようとした以上の物を持っているはず。作品にメッセージを込めるという手法は常套手段だし、狙いすぎ!と思う人もいるようだけれど、俺はこういう作品作りは十分にありだと思う。
▼アニメノチカラはどうだった?
作品の舞台となった1920年代後半から1930年代にかけて。この激動の時代の中国の風景。そこに暮らす人々。入り乱れる様々な人の思惑。この作品がアニメーションであったからこそ伝えられた物って何だと聞かれれば、俺はそんな時代の空気感だったと答えたい。文字だけではない。動きのない絵でもない。敢えて見ている人に固定的な時代背景のイメージを与える事によって、キャラクターが躍動しているように感じる。第1弾ソ・ラ・ノ・ヲ・トはどちらかと言えば世界観を敢えて固定しない作風だったけれど、この作品は真逆。俺にはこの閃光のナイトレイドの方が合ってるな。A-1 Picturesの作画も相変わずのハイクオリティ。背景とかプロップ(小物・小道具)デザインとか相当に時間をかけたんだろうな~。ご苦労様でした。
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