Fate/Zero(最終話:第25話)
▼最終話
切嗣[ CV:小山力也 ]やセイバー[ CV:川澄綾子 ]が感じていたに違いない、聖杯という物をめぐるこの戦いの無意味さ。そして脱力感。荒廃した冬木市を見て、この戦いは何だったんだろうと思い返していた俺の心境と、たぶんそう遠くは無いはずだ。
この作品だけを見ると、その虚しさだけが残るフィナーレってことになるけれど、これが「stay night」へと続くFateの物語のプロローグだってとらえると、切嗣が残そうとした「正義」の心だったり、既に自分のあるべき姿を確立しつつある凜[ CV:植田佳奈 ]だったりと、第5次聖杯戦争への足音が既に聞こえている。
それはまた、英霊にとっても同じ事だ。最後まで過去の自分を悔い、そして涙を流したセイバー[ CV:川澄綾子 ]が、そんな自分への救いを聖杯に求める。セイバーが再び次の聖杯戦争へと召喚された理由を、敢えて自分で勝手に解釈を加えてみる。
その幕切れはあっけなさすら感じるこのFate/Zero。やはりシリーズの原点として楽しめたかどうかで、作品全体に対する印象は全然違ってくると思う。
▼シナリオはより濃密に
この後半のストーリーでは、当然ながら聖杯戦争に参加したり関わったりする人間と英霊の数が減ってくる。前期ではありとあらゆる価値観、そして思惑が入り乱れた混沌とした世界観だったのに対して、徐々に特定の人物の"願望"が強くなってくる。それと同調して、作品への没入度もより深く狭くなっていく。
前期同様、ありとあらゆる要素に無駄がなくて、全ての事柄に意味がある。そしてそれが生み出す結果は、ある意味で必然。敢えて無駄を楽しむ作品がある一方で、この作品はとにかく綿密に物事を積み重ねて構築された圧倒的な世界観に、ただただ感服させられる。完璧な物を見せられたときの満足感を味わえる、数少ない作品だと思う。
▼人間性をえぐり出す
切嗣や綺礼[ CV:中田譲治 ]の人間性を、単純な言葉で批判することは簡単だし、そのレッテルを貼られるだけの外道であり、性格破綻者だと思う。この作品では、そこに留まらない。「なぜ、彼らがそのような行動を取るのか」という本質的な部分を突きつけてくる。
雁夜[ CV:新垣樽助 ]やウェイバー[ CV:浪川大輔 ]もまた同様。単純な記号としての登場人物ではなく、その存在を考えさせられるようなキャラクターばかり。それだけのスケールをよくこのシナリオの中に収めたと思う。
▼TVシリーズの限界突破
ufotableでは、「空の境界」以降、劇場版アニメの制作しかしていなかった。その体制のままで、今回のTVシリーズも制作に入ったとどこかで見た気がする。それは前期の映像クオリティはもちろん、この後期でも余すところなく堪能した。
時々、どうしてもキャラクターの絵が怪しくなるところがあるんだけど、それもこのクオリティだから目に付いてしまうだけの事だと思うんだよね。3DCGとかエフェクトの使い方も凄く上手くて、2Dであるキャラクターとの親和性も文句なし。バトルシーンのスピード感、迫力、武器の重さ。どれを取っても、これ以上の映像表現は、現時点でのTVシリーズアニメーションでは、到底実現できないというレベルだ。
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